ヘルスケア大学という健康に関するサイトがあります。
先日、歯周病治療に関して読者からの質問に答えてほしいという要請がありました。
質問の内容は、パーフェクト・ペリオを使ったら副作用が出たというものでした。
「パーフェクト・ペリオ」の名前を聞いたとき、率直に言うと、
「そう言えば、昔こういうのがあったな。プレゼンしてた人は随分と自信満々だったな」
というものです。
実は、歯科治療の世界では、この手の一部の人に受け入れられているが、実際は従来の治療に比べてそれほど有用性がないため、国際的に使われていないものがあります。
本当に有効なものかどうかを調べるには、複数の研究者による実験や研究できちんと誰がやっても同じ結果が出ているのかを見極めないといけません。
そうでないと、たまたま一部の人に効果があっただけだったとか、短い期間だけ効いたという 一部の健康食品の体験談のようなことになりかねません。
では、どうやって見極めたら良いのか?
それには、まずは論文に掲載されているかどうかを調べます。
具体的には、PubMed とか、Google scholar といった論文や文献を検索するサービス調べるのがよいです。
パーフェクト・ペリオに関して Google scholar で調べると残念ながら同じグループの実験結果しか出ていません。
これでは、パーフェクト・ペリオが安全で効果的かどうかは判断できないですね。
歯科治療の世界では この手の 一部の人に受け入れられているが、実際は従来の治療に比べてそれほど有用性がないため、国際的に使われていないものがあります
と、記載しました。
他にどのようなものがあるかというと、
(1)レーザーを照射したら歯周病が改善された、
(2)抗生物質を飲んだら歯周病が治った!?
(3)歯の神経を取るのがイヤなので、むし歯をわざと残して
抗生物質を入れて詰め物をしたら むし歯が殺菌されて神経を取らずにすんだ!?
などなどです。
(1)についてですが、
歯周病の 90% は慢性歯周炎と言われる ゆっくり病状が進むものです。
炎症があるところにレーザーを照射すれば、確かに一時的に炎症は改善されるかもしれません。
しかし、病気の原因が歯周ポケットの中にある歯周病菌なのでこれは残ったままです。
ですから、やがては歯周病は再発します。
つまり、レーザー照射は一時おさえの処置です。
(2)抗生物質を一時的に使うことはあります。
そもそも抗生物質は長期間使うと菌交代現象を起こし、薬が効かなくなってくるなどの問題が発生します。
抗生物質を服用して歯周病が根本的に治るなどということはありません。
(3)これは 3 MIX という治療法です。
日本人て何でこんなに抗生物質が好きなのでしょう?
歯髄を除去するのを回避するために一時的にむし歯の部分を残す方法は別に 3 MIX にしなくても昔からあります。
それは水酸化カルシウムを使う方法です。
これなら世界的に行われている方法です。
再現性がある治療法ですし、もちろん論文でもその有用性は多く発表されています。
こういうのをエビデンス(証拠)がある治療法と言います。
ただ、むし歯が大きく進行してしまった場合は、きちんとむし歯の部分を除去しないといけません。
こんな時に、抗生物質の効果を期待して3 MIX を使っても無効です。
実際、千葉の私の医院の近くに住む患者さんで、この3 MIX の治療を受けるためにわざわざ東北の某歯科医院を受診された方がいましたが、効果がなかったとおっしゃってました。
よく考えてみれば、そんなに効果がある治療法ならばこれだけ歯科医院がたくさんあるのですから、わざわざ何100キロも離れた東北まで行かなくても受けられるはずではないですか。
さて、話をパーフェクト・ペリオに戻します。
パーフェクト・ペリオは歯周病に効くのでしょうか?
答は ノー です。
一時的に効いても永続的に効くとは思えません。
もちろん、インプラント周囲炎にも効きません。
今からその理由を説明します。
パーフェクトペリオなどの機能性電解水について言えることですが、機能性電解水が歯周病原菌と直接接触すれば、確かに菌は死滅します。
しかし歯周病原菌は歯周ポケットの中であり、機能性電解水が歯周ポケットに流入するとは考えられません。
機能性電解水を仮に機械的に歯周ポケットに注入しても、それがバイオフィルム内に浸透し、歯周病原菌と接触する事は考えられません。
他の薬剤と同様な理由で、歯周病には効果はありません。
仮に機能性電解水がバイオフィルムに浸透し、歯周病原菌と接触したとしても その殺菌力は、次亜塩素酸ナトリウムやクロルヘキシジンと同程度で、とりたてて強力というわけではありません。
パーフェクト・ペリオは通販で 500cc で何と2800 円もします。
むしろコストの面で明らかに不利です。
強酸性でなくても、酸は長期間の使用で歯の表面を侵食します。例えば レモンをかじった後で、歯がぎしぎしした状態になるのと同じです。
恐らくインプラントの表面(チタン)が著しく腐食するのではないでしょうか。
これは大問題です。
名称からして日本語訳が「完全なる歯周病」と、ねらう効果と真逆なことを言っているのも気にかかります。
実際 うがい薬なら、リステリンなど市販のうがい薬がいくらでも販売されています。
もちろんこれとても歯周ポケットに入っていくわけではないので、歯周病を治すわけではありません。
とにかく 医療に飛び道具はありません。
時間のかかる治療から逃げたい一心でパーフェクトペリオなどのエビデンスのない安易な方法に飛びつくのではなく、自分がなぜ歯周病になってしまったのかをよく考え、根本的な原因を除去する治療法を選ぶことを強くおススめいたします。