抜歯即時インプラント、そして即時負荷というのは 決して新しい概念ではありません。
確かに少ない回数の手術、歯が早く入り咀嚼機能が早期に回復される というのは患者さんにとっては福音でしょう。
ここで抜歯即時インプラントと即時負荷を分けて記載します。
抜歯即時インプラント
初期の抜歯即時インプラントは必ずしもうまくいかないケースがありました。
それはせっかく人工歯根に入れた歯なのに唇側の歯ぐきが薄くなり、銀色のフィックスチャーが透けて見えてくるという症例が出てきたのです。
これは抜歯する歯があったところに同じ角度でインプラントを入れたために起きた 審美障害です。
このような改善すべき事例が出てきたこともあり、以前の私は抜歯即時には否定的な立場をとってきました。
しかし、その後術式及び使用するインプラントに改良が加えられ 今では症例をきちんと選べば予知性の高い術式になりました。
それはフィックスチャーをやや内側(舌側)に入れること、そして良質なHA(ハイドロキシアパタイト:骨の成分)でコーティングされたインプラントを入れることです。
症例をきちんと選べばと記載したように すべての方が対象になるわけではありませんが、以前なら何ヶ月も、場合によっては1年近く経たないと 歯を入れることができなかった方に4から5ヶ月で咀嚼機能、審美状態を回復してさしあげることができ、 喜びの声をいただけることが増え、私たちスタッフもうれしいです。
昔の抜歯即時とは違うということを強調したいです。
即時負荷
一方、即時負荷というのは文字通りインプラントを入れたその日に その歯で噛んでもOKという方法ですが、これは一般に人工歯根を入れた際のトルクやペリオテストという装置でインプラントの動揺度を測定することにより 即日に仮の歯を入れるか判断するものですが、正直な話、術者にとっては半ば冷や汗物ですね。
ベルギーはルーベン・カソリック大学のある先生は抜歯即時負荷をした場合は、教会でうまくいくように お祈りすると半ば冗談交じりに言ってました。
よく考えて下さい。
あなたがもし腕を骨折したとします。 普通はギブスで約1ヶ月固定して安静に保ちますよね。
もし担当医が「きちんとボルトで固定したからすぐに腕を使ってよろしい」と ギブスで固定しないで家に帰すなんてことがあるのでしょうか?
つまり、約1ヶ月間は局所を安静に保ち、 自分の体に備わっている治る力(自然治癒力)で骨がつくということは 理解できると思います。
同様に、インプラントが顎の骨と付くには その方の局所的・全身的条件によりますが、生物学的に必ずかなり骨の状態が良い方で 1.5か月、通常は3から4か月、骨の質が骨粗しょう症に近かったり、新たに骨を造成した場合などは6ヶ月待つというのが ゴールドスタンダードです。
即時負荷というのは 余程良い条件が重なった場合にのみ可能な処置です。
それにもし即時負荷させて一度はしっかり骨と付いていたインプラントが グラグラと動いてきたらどうなるでしょう?
その場合は、そのインプラントを撤去し、そういう場合は骨の状態も量・質ともに悪化していることが しばしばありますから、骨造成をしてきちんと骨ができたのを 確認してから再度人工歯根を入れることになるので 結果的に歯が入るのが大幅に遅れてしまい、こんな事なら最初から即時負荷などせずに、きちんとインプラント後3か月待ってから歯を入れたほうが、早く噛めるようになっていたということになります。
学会発表やホームページで出てくる症例は、その先生が手がけている中で、選りすぐりのうまくいっているケースを出しているので、それに惑わされてはいけません。
その裏に数多くの経過いまひとつ症例があると考えたほうがよいです。
ピュアスマイル原田歯科クリニックでは、安心安全確実を最優先しております。
抜歯即時負荷のインプラントは、かなり限られたケースのみと お考え下さい。